手羽先のピアノ人生40から

ピアノ再開組のブログです。

「老後とピアノ」(稲垣えみ子 著)を読んで

 タイトルにある本を読んだのは、発売から間もない昨年1月。

 もう1年以上前になりますが、アマチュアピアノ界隈(?)で結構話題になっている本のようで、今でも本屋さんの音楽関係コーナーの目立つ場所に置かれています。

 

    

 

 著者の稲垣さんは1965年生まれ、今から7年前に新聞社を早期退職して「色々無いもの尽くしの生活」をされていることで有名な方なのですが、この本は、ひょんなことから小学生で辞めたピアノを40年ぶりに再開し、ピアノにのめり込んで行く…というエッセイです。

 私よりもひと回りちょっと歳上ではあるものの、いわゆる中年ピアノ再開者の「あるある」が随所に散りばめられていて共感できるところが多々ありました。

 例えば、稲垣さんが目標にしていた憧れの曲、ドビュッシー・月の光を練習しているところ。

 

 「いやね、最初は、ただ弾けるようになればいいと思っていた。この「弾ける」というのは、楽譜を読んで、最初から最後までそれなりに弾きとおすことができればオンの字という程度のイメージである。(中略)ところが。音楽とは誠に過酷なものであった。」

 「ここはこう弾きたいと思えば思うほど、思うようにならない結果との歴然たる差は耐え難いほど拡大していくのであった。強く弾きたいと思えば聴こえてくるのはスカスカの慌てた雑音であり、囁くように繊細に弾きたいと思えば聴こえてくるのは思わず飛び上がるような間抜けなデカイ音なのである。」

 

 ・・・ここは本当に「うんうん!」と首を縦に振りながら読み進めました。

 再開当初は、ただ曲が弾けただけで満足できていたのが、だんだんと欲が出てきて弾けなさ加減に愕然としてしまう、なのにピアノを止めるどころか、どんどん「ピアノの沼」にハマっていく様子が描かれています。

 

 ちなみに稲垣さんがピアノを再開したきっかけは、ピアノ雑誌「ショパン」の連載ネタのため、出版社側が紹介した「イケメンピアニスト先生」に習うことになったという、ここが一般のアマチュアピアノ弾きとは違う環境です。本のレビューをみると、中には、「(こうした環境が)自分とは大違い」との意見もあり、賛否両論あるようで・・・。

 私の感想は、彼女がもし今後、別の先生に習ってみたくなったりしても「しがらみ」が大きすぎて難しいのではないか、雑誌の連載のため特別に用意された環境と引き換えに、「先生選びの自由」が制約されないかと、全くもって大きなお世話ですが、心配になったのでありました。

 

 あと、本の最後に「付録」として「私が挑んだ曲一覧」というものがありまして。本の中で、練習過程での悪戦苦闘や感動、等々のエピソードが色々と登場していると、ぜひ、これらの「挑んだ曲」の音源(動画)をYouTubeで視聴してみたくなりました。

 

 稲垣さんはまだ50代、まだまだ「老後」ではないと思いますが、今後「老後」になってもピアノを続けられるといいなと、同じ「中年ピアノ愛好家」として自分と重ね合わせてしまいました。

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